愛知発の超ニューカマーlisLook「夏やらまぼろし」
lisLook(リスルック)は愛知県豊橋市発の高校生バンドだ。2024年1月から豊橋市を中心に本格的に活動をスタートさせた。同年5月に初音源となる「回春」をリリース。9月17日に「夏やらまぼろし」をデジタルリリースした。
ここでは最新曲「夏やらまぼろし」をピックアップする。
エネルギッシュなアップチューンである本曲は、イントロからバンドのスキルがわかる、非常にハイクオリティーな1曲だ。アルペジオとカッティングを混ぜながら進行するシャープなギターに、たゆたうようなベースが絡み、随所でドラムがダイナミックな技をみせる。楽曲の途中でリズムのアプローチが何度か変わるなど、実験的な展開を見せながらも、バンドアンサンブルの差し引きの妙でサウンドでストーリー性を出しているところもお見事。己の中の感情や衝動を大切にしていることがサウンド、歌詞、ボーカルからもわかるが、勢いだけに頼らず、ルーツをしっかり咀嚼し己の中で鳴っている音像を捉え、再現しようという意志と意欲が感じられる。コーラスや一音の余韻まで含み、アレンジのディテールのそこかしこに、メロディーに沿った在るべき音を配置している印象だ。
2024年インディーズシーンの期待の星になり得る実力
まな(Vo./Gt.)のボーカルにも注目したい。フレーズ毎のトーンや歌い出しで細かなビブラートなどをうまく使い、揺らぎを作り出している。この揺らぎが耳に残り、一発で聴く者を歌の世界に引きずり込む。ボーカリゼーションも、喉を鳴らして発音するパターン、スコーンとクリアに出すパターンに加え、ファルセットの一歩手前ギリギリの高音、高音以外でも一音だけファルセットを使うなど、じつにアプローチが多彩。しかも、どのフレーズにも異なったニュアンスをつけながら、バンドのグルーヴを捉えて離さない抜群のリズム感がある。バンドのグルーヴとボーカルが相乗効果となり、後半へ向けて大きくクレッシェンドをかけるように、楽曲のスケールが増していくあたりも素晴らしい。メンバー同士の意思の疎通がしっかりできている証拠だ。歌詞は葛藤や心情の吐露と、日常を切り取った描写が並ぶが<夏は何をしてもいいような/そんな催眠術があり>と、俯瞰の視点とその表現にハッとさせられるフレーズもある他、全体を通して、聴き手に“それぞれの夏”を問いかけている。加えて、タイトルが“夏のまぼろし”などではなく、「夏やらまぼろし」というあたりに、言葉のリズムを大切にした独特の語感のセンスが感じられる。エモーショナルという言葉だけでは語れない、メンバーの音楽に対する情熱がほとばしる快作であると同時に、今後のlisLookを期待するに十分な1曲である。