滋賀発の不眠旅行(ねむらずトリップ)。新曲「Chapter」を発表

滋賀発の不眠旅行(ねむらずトリップ)。新曲「Chapter」を発表

2024/12/18

“リリック”担当のメンバーが紡ぐ夜の世界

不眠旅行と書いて“ねむらずトリップ”と読ませる5人組バンド。バンド名の字面、読んだ時の語感を含め、独特のセンスと言葉へのこだわりを感じる。ボーカル、ギター、ベース、ピアノ(キーボード)、そして“リリック”というユニークな構成も特徴だ。このリリック担当のメンバーが作詞を手がけ、このバンドのコンセプトの一端を担っている。“ねむらずトリップ”というバンド名どおり、歌詞には「夜」という言葉、夜を想起させる動詞や表現が出てくるが、言葉の配置が非常に練られており、メロディーに合わせて韻を踏んだり、同じ語感を持つ別の表現を巧みに取り入れるなど、その実力を発揮している。

2021年12月から本格的に始動した滋賀発の不眠旅行。初音源は2021年12月23日に「Eggs」内で発表された「Ginger(2021ver.)」である。以降、コンスタントに楽曲をリリースし、ライブ活動も展開。関西だけに留まらず、東京でもライブを行うなど、確実にインディーズシーンに軌跡を刻んでいる。

インディーズシーンに、着実に軌跡を刻む不眠旅行

2024年に発表された初EP『可惜夜』のオープニングを飾る1曲が「Chapter」だ。音数を抑えたバンドアンサンブルの繊細さ、そしてたゆたう大河のようなゆったりしたメロディーが特徴のミドルチューン。まるで水面に絵の具を一滴落とすかのようなサウンドスケープは、その広がり方も合わせて、独特の音像をゆっくりと描き出していく。サウンドレイヤーの増減もとても丁寧で、各楽器が混ざった時の色彩も美しい。途中で、シューゲイザーのようなフレーズのギターアプローチも見せるが、歪む2歩手前くらいの音色を使っていることに驚く。シューゲイザーのニュアンスをバンドのサウンドに、最適の形で落とし込むように、しっかりとジャンルを咀嚼していると同時に、既にこのバンドの世界観が揺るぎないものになっていることがわかる。そんな中でも、注目すべきはモエカ(Vo.)の歌声とスキルだ。時おり、矢野顕子や土岐麻子を彷彿させるようなクリアな声質は、神様が彼女に与えた宝物と言っていいだろう。喉が震えたような絶妙のビブラートのかけ方、フレーズ最後の母音の抜き方、歌い出しの子音の発音の仕方など、感覚的にやっているのだと思うが、この多彩なアプローチが間違いなく楽曲の肝になっている。少し淡々とした趣きのあるメロディーで進行する「Chapter」が、極上のポップスとして成立しているのは、モエカの歌によるところが大きいだろう。既に独自の世界観をきっちりと持っている不眠旅行。今後どのような活躍を見せるのか、とても興味深いバンドである。

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この記事を書いた人

伊藤亜希

音楽ライター/編集者。学生時代から音楽雑誌に勤務後、アーティストのFCサイトの立ち上げ・運営などを経験。現在はフリーランス。『RealSound』『MUSICA』、FC会報、FCサイト等で執筆中。『Eggs』は未知の音楽に触れられ楽しいです!

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