Eggsスタッフが今月の注目アーティストを選ぶ「Eggsマンスリープッシュ」!
2025年4月のマンスリープッシュアーティスト、クリオネ方程式(クリオネホウテイシキ)の万葉(Vo./Gt.)と恵成(Dr.)にオンラインインタビューを行った。このインタビューに向けてコメントをくれた、ナオキ(Gt.)の言葉も一緒に掲載する。クリオネ方程式が見出している、バンドの現在地とは?
名古屋発のクリオネ方程式。同じ熱量の仲間と長くバンドを続けたい
──バンド結成のいきさつを教えてください。
万葉(Vo./Gt.):ナオキ(Gt.)を中心に結成されて。その後、ヒラデシュンヤ(Ba.)が加わって。私はSNSで誘われてクリオネ方程式に入りました。ドラムはサポートでやってたんですけど、2024年9月から現ドラマーの恵成がサポートに入って。その年の12月に恵成が正式加入して、今の体制になりました。
恵成(Dr.):僕が前やってたバンドが解散してしまったんですけど、ドラムを続けたいと思って。名古屋で入りたいと思ったバンドがクリオネ方程式だったんです。まったく面識なかったんですけど、Instagramの DMで万葉に長文を送りました。
万葉:(その時は)長文が来てびっくりしました。“僕はずっとオルタナ、シューゲイズのジャンルが好きで、こんなバンドが好きで、クリオネ方程式も聴いてます。まずサポートからやらせてください。本気でやりたいです」って、すごい熱量のあるDMでしたね。ずっと3人でクリオネ方程式をやってきた中、自分から「やりたいです」って言ってくれる人は初めてだったので、やっとフルピース揃うかもと、めっちゃワクワクしたのを覚えています。
恵成:“バンドをいろんな人に知ってもらって長く続けたい”と伝えたら“私たちもそうだよ”と、同じ心意気だなと感じました。それにバンド内に社会人がいるので、この4月から社会人になる僕もバンドを続けられると思いましたね。
──バンド名の由来を教えてください。
万葉:「羊文学」や「文藝天国」のような2つの単語を合わせた単語にしたいと考えて、メンバーみんなで単語を言い合った中で、語呂の良いクリオネ方程式になりました。英語だとサーキットとかでバンド名が埋もれちゃうので、カタカナと漢字だと見つけてもらえるかなとも思いました。クリオネにしたのは、海の生物がいいなと思ったからです。ナオキも海の生物が好きなので、まず海系の生物の単語を出しました。
クリオネ方程式を聴いた人たちの生活や考え方に少しでも潤いを与えていきたい
──それぞれの音楽のルーツを教えてください。
恵成:バンドとしてのルーツはクレナズム、simsiis等の女性ボーカルのオルタナ、ギターロックです。個人的なルーツはメンバーそれぞれ近いようで異なりますね。僕個人としては、高校生ぐらいの時はインディーズの男性ボーカルのギターロックが好きで、大学に入ってからは実際にギターロックのバンドをやっていく中で、オルタナを好きになっていったんです。yubioriという男性ボーカルのオルタナバンドとかが好きでもありつつ、女性ボーカルのギターロックやシューゲイズも好きです。
万葉:1番最初に好きになったのはYUI。バンドよりシンガーソングライターをめっちゃ聴いていました。中学生ぐらいでRADWIMPSをめっちゃ好きになって、バンドが好きになったんです。クリオネ方程式の万葉らしいオルタナのルーツになったのはひとひらとかその感激と記録っていうバンドです。
──お2人が思うシューゲイズとは、どんなサウンドを指しますか?
恵成:僕のTHEシューゲイズは揺らぎとか17歳とベルリンの壁とか、Blurred City Lightsという名古屋のバンドなので、轟音ギターでエフェクトがいっぱいある初期のシューゲイズじゃないと思うんですね。ドリームポップも好きなんですけど、逆にちょっとポップすぎるというか。
万葉:自分が思うシューゲイズはサウンドが前に出ていて、なおかつ空間系で音がフワフワしている中、ボーカルがうっすら遠くの方で歌ってるみたいな感じ。自分の中では、マイブラッディヴァレンタインがシューゲイズなのかなと思いますね。
──曲作りはどうやって行っていますか?
万葉:作詞作曲を全部やっているナオキから、打ち込みで全パートの入ったデモが送られてくるんです。それを各々聞いて解釈したものをスタジオでやってみて、変えるとこは変えていきます。歌詞とか歌メロは変わることはほとんどないんですけど、ベースライン、ドラムのフレーズとかはちょこちょこ変わるかなって感じです。
──4月1日に1st EP「バッカルコーン」がリリースされましたね。
ナオキ(Gt.):「バッカルコーン」のタイトルは、クリオネが捕食する際に使用する触手のことなんです。誰の日常にもある小さな痛みや悲しみの全てを包み込んでしまいたいという願いを込めて「バッカルコーン」と名付けました。クリオネは小さく儚い生き物だけど、時折バッカルコーンを伸ばしてその姿を大きく変えるんです。私たちはもちろんのこと、耳にした人たちの考え方や生活が少しでも変わることを期待して今作をリリースしました。
──曲によって歌詞のテーマが異なると思いますが、毎回すごいと思うポイントはありますか?
万葉:ナオキ本人も大事にしていると思うんですけど、歌詞に関しては言葉遊びがあるんですよ。考えさせられるような歌詞も好きですね。曲も聴きやすいJ-POP。私もJ-POP大好きなので、毎回曲を聴いてすぐに、すごくいいなって思います。
音楽に救われた過去があるから今がある。クリオネ方程式に自分も救われている
──今、活動している中で最も大事にしていることはなんですか?
万葉:メンバーが無理のないように最大限自分たちのやりたいことをやることが、バンドのモットーです。ボーカル視点で言えば、人の心に刺さる歌を歌えるようになりたいです。そのために楽曲を分析をしていますね。
恵成:ドラム目線だと、クリオネ方程式はゆっくりで音数が少ない曲が多いので、ドラムが悪目立ちしないように心がけています。アンサンブルを意識して、ほかの楽器を邪魔しないようにしていますね。
──自分たちのバンドを一言で表すと?
恵成:浮遊です。名古屋のほかの界隈だと魂が削れるような燃え上がるライブをしているバンドが多いんですけど、僕らにはそれはあんまりない。逆に浮遊感があるので、浮遊だと思いますね。
万葉:二面性。サウンドやバンド全体に対して、フワフワしたバンドだと思われがちなんですけど、ライブはフワフワしている部分もあれば、逆にギターロックみたいに熱くなるシーンもあるんです。音源に関してはクリアで綺麗なんですけど、ライブはみんな野心が出るので、そういう二面性が面白いのかなって思います。
恵成:俺と全然違うね(笑)。
万葉:視点が違うね(笑)。
──バンドにとって、今の目標は?
恵成:バンドメンバーそれぞれの生活を大事に、広く様々な人に音楽を届けたいです。自分たちの好きな音楽を追求しつつ、それが多くの人に広まることを目標としています。
万葉:メンバー間ではライブの完成度について話すことが1番多いかもしれないです。
恵成:そうだね。自分の中で負けたと思うか思わないかとか。
万葉:対バンとかお客さんのノリももちろんですけど、他のバンドをライバル視してライブをやっているので。今日はやったったな!みたいな手応えを感じることはあります。
──これから控えているライブやリリース情報など、今後の予定のトピックスを教えてください。
恵成:今後は名古屋でも県外でもライブを行って、定期的に企画を打っていくつもりです。また、音源のリリースやMUSIC VIDEOのリリースも定期的に行って、クリオネ方程式の音楽が多くの人に広まるような活動をしていく予定です。
──最後にEggsサイトを見ているインディーズファンの皆さんにメッセージをお願いします。
万葉:私は辛い人に寄り添いたい思いが強いので、「嫌なことがあったら、とりあえずライブに来い!」って言いたいです。私もバンドそのものが自分の居場所だし、歌っている時が1番自分の感情を素直に出せるので救われております。
恵成:僕もライブハウス通いを始めたきっかけが、高校生活がうまくいっていなかったからなんです。音楽最高だから、どっぷりハマってください。音楽をいっぱい聴いてください!
取材・伊藤亜希
文&構成・橋本恵理子