そのサウンド、ボーダレスでシームレス。vierror(ヴィーエラー)の魅力を新曲「微熱」から紐解く
vierror(ヴィーエラー)は、男女混合3人組のエレクトロポップバンドだ。バンドの公式Xによれば、2025年1月に活動を開始したばかり。生バンドとエレクトロの要素を融合し、自由なアプローチでダンスミュージックを作り出している。サブスクリプション音楽配信サービスが浸透し、ジャンルも時代、国境さえもシームレスに捉える音楽リスナーが格段に増えた。vierrorのメンバーも同様だと思うが、インプット、咀嚼、アウトプット、この3つの能力が非常に高い。特にインプットの貪欲さには目を見張る。自分たちではエレクトロポップバンドと称しているが、楽曲に多様なルーツが散らばっている。ブラックミュージック、シティポップ、AOR、ブラックコンテンポラリー、ハウスなど……枚挙に暇がない。そのサウンドは、クロスオーバーというよりノーボーダー。2025年3月1日に初音源となる1stEP『DECANTER』を発表。3曲収録されているが、どの曲も非常にハイクオリティーだ。
今回は1stEP『DECANTER』に収録されている「微熱」をピックアップする。一聴しただけでは、生音か打ち込みかわからないバックトラックがこのバンドの持ち味だが、間奏のように入ってくるベースソロ以外は、ほとんど音の余韻がなくデッドな音で構成されている。しかしながら、緻密なフレーズでリズムをしっかり作り出し、無機質にならず温度を感じさせる点がすばらしい。裏打ちのジャストなビートにしなやかなグルーヴを作っていくのがボーカルの表情豊かな歌声だ。洒脱で高低差もあるメロディだが、最初の一音から発音、発声、音量とも申し分ない。歌い出しのワンフレーズで、聴く者を捉えて離さない艶っぽい声質も魅力だ。音の配置の緻密さ、空白を生かす手腕、滑らかにメロディを泳ぐボーカルと、密度と浮遊感が共存している名曲。少しずつ体温が上がっていくようなストーリー性もお見事。歌詞も抽象的な表現と具体的な表現が美しいバランスで配置されている。感情と身体が両方揺れるダンスミュージックだ。
ライブ活動もスタートさせているvierror。これからどのようにリスナーを“踊らせてくれる”のか。楽しみでならない。
文・伊藤亜希