3月22日に神戸ポートオアシスにて、Battle de eggの決勝コンテストが開催されました。
今年で13回目を迎える、全国初の行政共催のオーディション。神戸市のバックアップのもと、官民合同のオーディション形式にて、若き才能を世に送り出すことを目的としています。
ソロ部門とバンド部門に分かれて審査し、グランプリアーティストはCOMING KOBE出演権と無料レコーディング権、ワーナーミュージック・ジャパンからの配信に加え、ソロ部門のアーティストにはアコフェス、バンド部門ではTOKYO CALLINGの出演権も獲得します。
決勝には応募総数150組以上から選ばれたソロ部門4組、200組以上から選ばれたバンド部門4組が、10分の間で思い思いのパフォーマンスを見せました。このレポートでは、その8組の戦いとゲストバンドの月と徒花のライブの模様をお伝えします。
ソロ部門
①DAEHAN

1組目は韓国出身のシンガーソングライターDAEHAN。しっかり自己紹介をし、歌う前には丁寧に曲紹介をする姿に誠実な性格が感じ取れる。
1曲目は『逢いたい』。愛する人への切実な思いを歌ったバラード。その歌声は透明感の中に芯があり、しっかり聴き込ませた。2曲目は一転明るいバンドサウンドの『To.us』。駆けつけたファンも立ち上がり、クラップとコールで会場を明るくした。DAEHAN自身もノリノリでキラキラとした衣装の何倍も輝いた表情を見せていた。
「出会ってくれてありがとうございます。これからもよろしくお願いします!」と最後まで誠実で純粋に音楽に向き合ったステージだった。
②TЯicKY

1曲目『JAPANESE女の子』から盛り上がったのは、その個性的な存在感だけでなく、短くても伝わる曲のクオリティと堂々としたステージ。そして「神戸、頭洗ってますかー!」から『シャンプー☆プロカリテ』へ。まさかのメタルサウンド。ファンはヘドバン。そして恐らく唯一のギターソロならぬシャンプーソロ。
「あらびき団の予選と間違えてないからな」と初見へのフォローも忘れず「あと一歩で夢を掴み損ねた人生だけど、今COMING KOBEに出られるかもしれないという夢が転がっている。カミコベでシャンプー☆プロカリテを歌いたい!」と伝え、ラストは『詐欺ってごめん』を全力パフォーマンス。確実に全体がTЯicKYの音楽に心洗われた10分だった。
③山田萌

「さっきの熱気がすごかったですね。私の曲は踊る曲ないですけど…」と呟くように言いながらも「例に漏れず私も優勝目指してますので、よろしくお願いします」という言葉にたしかな意志を感じさせる。そしてギター1本弾き語りで『海』『Signal』の2曲を披露。その歌声と演奏はグッと空気を変えて、屋内ということを忘れさせる天然物の空気感で包んだ。初神戸とのことだったが、観客も頭を揺らしながら聴き、優しい拍手を送っていた。『Signal』で繰り返された<It’s all right It’s all right 心配しないでよ>の歌声は今後も出会った人の背中を押す。
④神谷友志

リハーサルから感じていた気合。それをそのまま乗せたようなロックナンバー『優しい世界』の熱量は会場のクラップを生む。本人も汗だらけ。
昨年も決勝進出した神谷。そのリベンジを胸に「今日ここで歌うことをイメージして作った」という弾き語り曲『残火』を演奏。<結末は等しく美しいとただひたすらにそう願っている>という歌詞と魂を込めた歌唱は、今日を勝ち切ることだけでなく、目の前の”あなた”に届けていくシンガーとしての姿勢も感じて胸を打たれた。審査員のJOEY(EGG BRAIN)も「ビックリしました!その声をこれからも大切にしてください!」と評価した。
バンド部門
①sanagi

バンド部門トッパーは岐阜県スリーピースsanagi。かい(Vo.Gt)は「関西の皆さんを元気にするフェス。俺らも今日皆さんを笑顔にして本チャンに出ます!」と伝え、『楽日』からスタート。かいの伸びやかな歌声を支えるひがし(Ba.Cho)、なおとし(Dr .Cho)のコーラスと爆音の演奏が鳴り響く。そのトップギアは『桜の街』『デイバイデイ』と続いても落とすことなく、岐阜や名古屋のライブハウスシーンで鍛え上げた実力を如何なく発揮していた。
「しっかり見てくれて神戸のことが大好きになった」とかいは感謝していたが、改めて何気ない日常の幸せに気付かせてくれる歌を届けてくれて、こちらこそ感謝したい。

「ミーマイナーです。よろしくどうぞ」とクールに挨拶したかと思えば、『オンリーロンリータウン』が始まると「盛り上がっていきましょうー!」とハイテンションで高らかに叫ぶ美咲(Vo.Gt)。さすけ(Ba)もステージを動き回りながら演奏し、よはく(Sup.Gt)もクラップを要求して会場を盛り上げる。
バンドの自己紹介をした後「今日一番楽しんで帰りたいと思います!」と『ワンルームナイト』へ。バンドができる喜びを体全身で表現するその姿は、私が昨年見た時よりもたくましさが増しており、この数ヶ月で重ねたライブ数を感じさせた。この日が初神戸。太陽と虎など神戸のライブハウスでのバチバチのライブも見たくなった。

「ここから大阪の空気味わってもらうから、一緒に立ち上がってこの世で最もダサいダンスをしていきましょう!」とK.T(Vo)が叫んで『dance‼︎dance‼︎』から始まった大阪のエレクトロポップROCKバンド・Parallel Frank。ノリノリなサウンドで会場はすっかりええ感じ。続く『スターチス』でも境界のない手を取り合うロックを届ける。
ただこの日はここからがハイライト。予定にない3曲目『TRAVELER』を詰め込み、時間を見て自ら1分半ほどで強制終了。最後の1秒まで楽しませ尽くすというバンドのプライドがそこにはあった。この続きはライブハウスで。

MCの紹介の後、ステージ上で円陣を組んで気合を入れた4人。「やるしかないっしょ!」と稲田翔仁(Gt.Vo)が叫び『未だ見ぬ明日へ』を轟かす。ステージ上から落ちそうな勢いで演奏するTaKaO(Ba.Cho)と塩見龍(Gt)。荒井慧輔(Dr)も含め、代名詞のフルスイングロックを届ける。
「この決勝のステージ、何年待ったことか!」と稲田。連れてきてくれたリスナーに感謝し「次は俺たちが青空の下に連れていくのを絶対に叶えないとあかんと思ってます」と『このまま』を感情たっぷりに演奏し、シンガロングも起こる。Lailahの音を頼りに歩いて行けば、何とかなるかもしれないという勇気を与えたステージだった。
ゲストアクト・月と徒花

ゲストアクトを行ったのは地元・兵庫のロックバンドにして、2023のグランプリアーティストである月と徒花。昨年もゲストアクトをしており、まさかの3年連続出演。今年は4月20日に大阪福島2nd LINEにて再始動企画を控えており、一足先に新しい姿をお披露目ということになった。
1曲目『フルヘッヘンド』から会場はクラップ、サビでは手を横に振ったりしていて、その明朗なポップロックで楽しませていた。『ビコーズ・オブ・ユー!!』でも爽やかでノリの良いサウンドを鳴らし、長丁場のフロアも元気になるエネルギーを与えていた。体に溶け込みやすくて栄養満点。ウイダーのようだ。『両片思い』はゆったりとした曲で、温かい気持ちになって聴くことができた。
MCを挟み『アナログレコード』へ。冨岡竜之介(Gt.Vo)のボーカルが立ちながらも、4ピースの演奏が自由に舞うように鳴っているバランスの良さが心地よい。そして最後は『水面の月』。再始動する彼らが今歌う<再会のため足を前に出すのさ 止まりはしないさ>という歌詞は、これからも今日みたいなPOPに、爽やかに、でもしっかり熱さを持ったライブを見せてくれることを予感させた。
審査結果

既に当日中に結果が出ているように、ソロ部門はTЯicKY、バンド部門はParallel Frankがグランプリを獲得した。TЯicKYは「僕1人の力では獲れなかったので、本当に皆様のおかげです。これからも楽しく頑張ります」、Parallel Frankは「いつもオーディションはファイナルで落ちてきた。今回初めて勝ち上がれて嬉しいし、見てくれた人のおかげ」と喜びと感謝のコメント。
各審査員もレベルが高くて審査が難航したことに触れ、稲村太佑(アルカラ)は「オーディエンスが例年以上に盛り上がってくれて、ライブだけでなく応援している人の愛もあって、素晴らしいオーディションになりました」と感謝した。
全国から応募があって、決勝は結成半年のミーマイナーから20年目のTЯicKY、リベンジの神谷友志と様々な思いがぶつかり合うオーディションとなった。神戸という場所から純粋に新しい才能を感じる音楽が今後も発信されていくことを願っている。

photo by 雷
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