札幌発の4ピースバンド、ハイドアンドシープ「スケルトンカメレオンガール」が放つ“視覚”と“聴覚”のディープインパクト
ハイドアンドシープは、北海道・札幌を拠点に活動する4人組バンド。2023年に活動を開始している。メンバーは、猪口航平(Vo./Gt.)、ナガセハヤタ(Vo./Gt.)、ユイト(Ba.)、鈴木琢真(Dr./Cho.)。現在発表されている4曲は、2曲ずつ猪口とナガセが作詞と作曲を手掛けている。曲によってボーカルとリードギターが入れ替わるスタイルも大きな個性だ。2010年代以降のギターロック、ダンスロックをルーツに持ちながらも、随所にひねりの効いたアレンジや、歌詞さえもフックにできるスキルで聴く者を飲み込むような迫力がある。サウンドの情報量は多い方だと思うが、一貫したグルーヴ感があり、あちこちにはみ出しながらも決して散らからずにまとめてくるバランス感覚もお見事だ。Eggs内のアーティストランキングでも上位に食い込み、その名が全国区になりつつある印象だ。
「スケルトンカメレオンガール」のハイドアンドシープの持ち味が凝縮されている。まず触れたいのはタイトル。字面と語感のインパクトが同じくらいに強烈。他曲のタイトルにも言えることだが、普通なら結びつかない単語の組み合わせ、漢字とカタカナの組み合わせで視覚と聴覚と同時に刺激する。ユーモアとシュールさが同居するネーミングセンスは、間違いなくこのバンドの武器だ。イントロのギターを筆頭にバンドアンサンブルは痛快でダンサブル、しかしその上に乗るメロディーにはどこか憂いがある。特にファルセットの抜き方が印象的。派手さはないが安定していて、前述したこの曲の憂いに一役かっているように思う。歌詞の韻の踏み方も巧みで、気が付いたらフレーズ終わりで繰り返し韻を踏んでいる。ダンサブルなアップチューンながら途中で転調、リズムの変化を見せ、楽曲の起承転結をしっかり表現しているところもいい。また、曲のド頭から登場し、曲中で何度か使われる<だ・あ・れ>というタイトなフレーズが、この曲のパンチラインになっているあたりにもセンスを感じる。加えて、最後の最後に<だ・あ・れ>の後に<あ・そ・ぼ>と重ねて終わらせる工夫に満ちた構成で、曲の持つキャッチーな中毒性をさらに押し上げている。インディーズシーンからの期待にしっかり応えてくれそうなバンドだ。
文:伊藤亜希